【私の再反論】
1.私の参考文献は「ケルン 『中世の法と国制』 創文社 昭和43年」です。
保守思想の淵源である、中世ゲルマンの法思想の解説書です。
140ページ程の小冊子ですので簡単に読めます。
本書では「古き法は、より新しき法を破る」と書かれていますが、
分かりやすいように自分の言葉で意訳して
「より古きものはより良きもの」と書きました。
ケルンの言う「法」とは「慣習法」のことで、
従来通用している慣習法に問題がある場合、
より古い慣習法を参照して現在に見合う法を
「発見」しようということです。
谷田川先生の参考文献である
中川八洋著 『保守主義の思想』『悠仁天皇と皇室典範』にも
繰り返し同様のことが述べられています。
→参考文献の引用
「より古きものはより良きもの」という考え方が根底に無ければ、
このような思想は生まれません。
つまり、この考え方は、私の個人的見解ではなく、
保守思想の基本的な原理です。
2.保守思想とは本来、近代化に対抗して
「中世」の価値を保守するという考え方です。
中世は封建社会であり、封建社会は土地経済でした。
土地の領有が最も大きな関心事でした。
土地の領有は王が書面によって認めたとき、正当化されました。
中世においてはより古い書面を持っている者に、
土地の領有が認められました。
「より古き」書面が「より強い効力」を持つ、このような社会形態が
保守思想を醸成しました。
3.これを一般化すると、現実問題に直面したとき、
科学技術は最新技術で問題解決しますが、
これに対して人文知は古典を紐解きます。
古典を紐解き、体系立てて現在の問題の原因を突き止め、
解決策を提出します。
より古く、より連綿とした体系で説明できれば、
より説得力が得られます。
また、キリスト教を例に取ると、カトリックやプロテスタント、
ギリシャ(ロシア)正教会のような国家権力と結びつく前の人々の方が、
よりキリストの教えに忠実であり、さらに聖書が書かれる以前の人々は
より純粋にキリストの教えを実践していました。
イスラム教も仏教もユダヤ教も同様で、より古い信者がより
教義を正しく実践していたと考えられています。
「より古きものはより良きもの」という言葉は、
奇異に思われるでしょうが、非常に含蓄がある言葉であり、
この言葉がなければ保守思想の魅力は半減するように思います。
以上
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保守思想 目次
1.古き良きもの
・【反論】個人的感想(ではない)
・【反論】長く続いたものは良きもの
・【反論】過去の叡智
・【反論】神話から男系(ではない)
2.神話と歴史
・【反論】神話と歴史
3.時効の論理
・【反論】時効の論理
4.悪しき陋習
・【反論】悪しき陋習
5.墓の下の民主主義
・【反論】墓の下の民主主義
6.【反論】まとめ